外国籍社員雇用はこれまでの当たり前に新たな視点で向き合える

身近なチャンスを自ら掴む

CareerFly 羽二生知美(以下羽二生):本日は、注目のAIベンチャーTRYETING社の外国籍人材採用&活躍について、お伺いいたします。よろしくお願いいたします。

トライエッティング 取締役副社長兼COO 菅沼美久氏(以下菅沼氏):よろしくお願いします。

羽二生:まず、多国籍チームをまとめ上げる、COO力の原点について、お伺いしたいです。
菅沼様は、南山大学大学院国際地域文化研究科修士課程を修了されたことや、日本企業の海外向け内部資料・仕様書を専門に取り扱う翻訳会社にお勤めの経験があるなど、経歴に外国との繋がりが多いように見えます。海外や外国への興味はいつからお持ちでしたか?

菅沼氏:幼少期に、家族でよく三重県の志摩スペイン村に出かけていました。ただのテーマパークではなく、歴史や文化を学べる博物館も充実しているため、何度も通ううちに、スペインという国に興味を持ちはじめました。
その後、外国語そのもの、当時は英語に興味が湧きました。高校がカトリック系で、運営する修道会がスペイン系であったことで、再度スペインへの興味関心が湧きました。シスター同士のスペイン語を聞いているうちに、スペイン語も面白いなと思い、南山大学への入学が決まってすぐに、1ヶ月単身渡西したことも、スペインへの興味を強めた機会でした。

羽二生:幼少期から外国の文化に一貫して触れられていたのですね!
菅沼様にとって、外国籍の方が周りにいらっしゃることは、当たり前な環境でしたか?

菅沼氏:いえ、そんなことはないと思います。
大学入学までは、学校に1〜2名ALTの先生がいるというような環境でした。ただ、言語を通じて外国籍の方々と触れ合いたいという思いはあったので、積極的に関わっていたと思います。
母校の南山大学には、留学生が多く通っています。そのため、大学ではより積極的にコミュニケーションを取れるようになりました。異なる文化を持つ方々と、国籍関係なく人間対人間で関わることを学びました。

一人で笑顔

2社で学んだコーディネーションスキルを活かし、TRYETING COO就任

羽二生:自ら外国籍の方々に興味を持ち、関わることでコミュニケーションの機会を作り出されたのですね。就職は、外国語のスキルを活かした、翻訳やビジネスのコーディネートなどをされていたとお伺いしております。
こちらでも外国籍の方と一緒に働かれていましたか?

菅沼氏:いえ、就職した時には、社内に外国籍社員は一人もいない、The・日本企業でした(笑)もちろんビジネス上で外国籍の方々と関わることはありましたし、恒常的に外国語も使っていましたが、社風としては日本企業でした。
一人、メキシコ国籍のインターン生がいたことがありましたが、それ位です。

羽二生:そうでしたか。その後、企業から名古屋大学大学院の職員へと転職されます。
その時はどのようなタイミングでしたか?

菅沼氏:1社目で2年と少し仕事をして、ある程度の業務理解やスキルを得たので、次の経験を積みたいと思っていた中でご縁があり、名古屋大学大学院へと転職しました。
兼ねてから独立志向があり、ビジネスについて考えているタイミングでもありました。
そんな時に、大学時代にアルバイトで同期だった長江(TRYETING代表)と偶然再会し、一緒に起業しようという話も持ち上がり、新しい職場で新しいスキルを得ながら、TRYETINGの立ち上げ準備を進める。そんなタイミングでした。

羽二生:そんな素敵なご縁で、TRYETINGを創業されたのですね。
大学院では、どのようなお仕事をされていましたか?

菅沼氏:大学院では、ある研究室専属の職員として働いていました。研究室の予算の管理から、生徒と先生をつなぎ、円滑に研究が進むようにするという仕事です。そこでは、アジア系の学生が多く在籍していました。
教授と学生という師弟関係だと、なかなか伝わりにくい学生側の本音や悩みなどを汲み取って、学生に問題のない範囲で教授とコミュニケーションを取り、その後の研究等が円滑に進むように心がけていました。

二人で笑顔

羽二生:前職でのコーディネート経験と、大学院での立場の違う方々の間のコミュニケーションを取り次ぐ経験が、今のCOOの仕事に活かされているのですね。

菅沼氏:はい。現場側とビジネス側をつなぎ、うまく社員が仕事をできる環境を作るよう努める点では、大いに役立っていると思います。

羽二生:ちなみに、独立をお考えの際はどのようなビジネスを検討されていたのですか?

菅沼氏:簡単に言うと、日本の文化を世界に広められるECサイトの様なものを考えていました。
これまで外国籍の方々と接する中で、日本の文化や考え方について、誤解を持っていたり、知識が浅く、あまり魅力に気づいてもらえなかったりして、悔しい思いをしたことが何度かありました。 そこで、例えば伝統工芸品をサイト上で紹介し、販売、そこに文化的背景やストーリを載せる。そうすることで、文化を正しく理解した上で日本製品を手に取ってもらい、愛着をもって商品を長く使用してもらいたい。そんな仕組みを検討していました。
実はこのアイディアを長江に伝えたことがきっかけで、みんなでやりたいことを持ち寄って起業をしようと、TRYETINGに誘ってもらえたのです。

文化の違い→考え方の違い

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羽二生:なるほど!とても面白そうです。今後そのアイディアが実現することを楽しみにしています。こうしていよいよ御社が誕生しますが、その当時から決めていた組織についてのビジョンはありますか?

菅沼氏:それぞれ強みが違う人間が、やりたいことを持ち寄って作った会社ということもあり、それぞれの個性や強みを生かして、それぞれの目標に向かって伸びていける会社にしようということは話していました。

羽二生:個性や強みを活かせる組織は強いですね。そんな御社に外国籍の方が初めてご入社されたのは、どの様なタイミングでしたか?

菅沼氏:創業2年目で、7人目の社員としてジョインしました。7人目となると、ビジネスをより拡大していこうと、アクセルを踏み直す転換期でもありました。
国籍は問わず、必要な人材であれば採用をするというスタンスでいた中、AI分野でのエンジニアを採用しようと思った時に、私が紹介した人材がたまたま外国籍の方で、ご縁があり採用したという経緯です。

羽二生:そうでしたか。外国籍の方がご入社され、すでにいらっしゃった日本国籍の方々はどの様なリアクションをされましたか?

菅沼氏:コミュニケーションに苦戦していました。入社した外国籍の方は、日本語は問題なく話せる方です。通訳の経験もある方でした。ですが、そもそもの「文化的背景による考え方の違い」と「日本語の曖昧なニュアンス」によって、コミュニケーションエラーが起こることがありました。

1社目で関わったメキシコ国籍のインターン生とこんなことがありました。
その当時、会社が入っていたビル全体での避難訓練があり、放送が鳴ったら外に出なければなりませんでした。その時に、インターン生に「避難訓練だから外に出なければいけない」というと「なんで?」と聞かれました。結局納得してもらうためには「日本は自然災害が多い国なので、いつ自然災害が起きても対応できる様に、皆で日頃から練習をしている。自分の身を守ることになるので、参加してほしい。」ということまで説明しました。

とことん向き合って、文化から相手を理解する姿勢をもつ

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羽二生:なるほど。考え方が違う中で、考え方が違うと答え合わせに苦労することがあるのですね。
コミュニケーションエラーに関して、どの様に対応されているのですか?

菅沼氏:とにかく向かい合って話すことにつきます。コミュニケーションエラーにおいて、劇的な改善方法はないと考えています。向かい合って話すときに重要なのは、聞く側に「聞く耳」があるということです。まず相手を理解しようと徹底的に聞く。これがないと、いくら伝える側が頑張っても、全く伝わらないということになります。そうすると伝える側も諦めてしまう。
立場に上も下もなく、一人間同士として相手を尊敬し、聞く。これが一番大切だと思います。これは国籍全く関係なく、もちろん日本人同士でも大切なことですが、特に外国籍の方々と話すときは、特に注意しないと、人種差別と捉えられかねません。
どうして日本国籍の方が伝えるとわかってくれるのに、私たちが伝えると理解してもらえないんだという様に、です。

羽二生:そうですね。相手のことを理解しようという姿勢が、コミュニケーションを大きく前進させますね。

菅沼氏:文化的理解や配慮の不足で相手を知らず知らずに傷つけてしまうこともあったりします。
例えば、日本やアジア圏の方は、相手の体型についてコメントすることがしばしばありますよね。太った?痩せた?など。
これは、欧米圏の方にとっては、訴訟レベルのセクハラに当たります。
外国籍社員が気づいた時に指摘してくれるので、その時々で社内に共有すべきものは共有し、社員全員で日々勉強しています。

羽二生:それぞれの考えを歩み寄ることは、コミュニケーションの中でも大変な部分ですね。
また、外国籍社員がいないと、気付けない部分でもありますね。

菅沼氏:はい。異なる文化を持つ方とのコミュニケーションの難しさやポイントを、理解する必要なく人生を過ごせるのであれば、それはそれで良いと思います。ただ、果たしてそれが今後現実的でしょうか?日本の労働人口が減る中で、外国籍の方の力を頼らざるを得ないと政府も考え、それに対する政策も進んでいます。そうなると、必然的に外国籍の方とのコミュニケーションが増える環境になります。日本に住んでいる人たちは、国籍関係なく同じ人間同士として、友人を知る様にバックグラウンドから相手を理解する必要が増してくると思います。

徹底的に相手と向き合うための採用プロセス

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羽二生:今後日本で生きていく上で、外国籍の方の文化を考慮しながらコミュニケーションをとることは、必須のリテラシーとなりますね。反対に、外国籍社員と働く上で、良いなと感じることはありますか?

菅沼氏:もちろんあります。
コミュニケーションの苦労の先にあることですが、まず当たり前を疑えるということです。これまで、もしかしたら不要なのに必要だと思い込んでいたルールや前提を、外国籍社員の純粋な疑問で発見することができます。
疑問を声に出すことや、考え方を互いに積極的にシェアすることは、日本国籍社員が学べる部分だと思います。

また、今年6月からキャリアフライ社経由で1名採用させていただきましたが、AIチームの外国籍社員2名が良いチームワークを見せてくれています。

相手から学ぶという素直な姿勢が双方にあるので、それぞれの強みや知識の厚い部分を教えあって、お互いに高め合っている様です。AIチームの先輩外国籍社員から、「新しく入社した方が、こんな知識も持っていて、本当に彼すごいんだよ!」と言っているのを聞くと、本当に採用してよかったなと思います。
上下のしがらみや、教える側・教えられる側などの立場や当たり前を取り払い、彼らの様な関係性を築くことが、他の社内チームにも波及していったらいいなと思います。

羽二生:それは素晴らしいですね。コミュニケーションコストがかかる部分はありますが、それによって他のコストを減らす、また社内のコミュニケーション促進につながることがあります。
相手を理解する上で、貴社の採用プロセスで面白いと思っていることがあります。最終選考での会食です。どの様な考えから始められたのですか?

菅沼氏:会食は、より候補者のことを深く知り、候補者にも我々を知ってもらうための場として、選考の最終段階で設けています。ビジネスのオンオフをつけることはもちろん大切で、面接の場でビジネスでの一面を見せてくれることも大切なのですが、弊社では、国籍関係なくそれぞれが活躍できる組織を目指す中で、深いところでもお互いに繋がれることを大切にしています。
より深く相手を知り、繋がるために、美味しいものを一緒に食べて、お酒を一緒に飲むことが良い手段なのではと思い、始めました。創業初期から今も続けています。
現在は新型コロナウイルスの影響等もあり、開催できていませんが、できる限り続けていきたいです。

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羽二生:選考時から深いコミュニケーションで繋がれた方々だからこそ、先述された様なコミュニケーションの壁も、話し合って超えていけるのかもしれませんね。
今後、多国籍なチームとして貴社はどの様なキャリアフライ(飛躍)をお考えですか?

菅沼氏:特に多国籍チームにこだわった事業展開は考えていません。まずは国内のクライアント様へ貢献したいと考えています。
海外展開についても、今すぐではないですが検討はしています。その頃にはまた、関連国籍の方に入社いただくなど、これまで関わらなかった方々との関わりができると思います。それを思うと今から楽しみです。

羽二生:それは楽しみです!
最後に、外国籍人材雇用を検討されている企業経営者の皆様へ、メッセージをいただけますか?

菅沼様:もし外国籍の方から応募を受けたら、日本語や技術スキルなど最低限なこだわりはありながらも、まずはお会いして欲しいです。
英語や外国語にアレルギーがある人や、外国籍の方と対峙するとつい構えてしまう方もいると思います。ですが、前述の通り今後外国籍の方と働くことは避けて通れない時がきます。勇気を出してまずはお会いしてみてください。会うと、「意外とこの人面白い!」「うちのチームに合うかも?」ということがあります。この様な方と出会うのは、会社にとってはチャンスです。

貴重なチャンスを逃さないでいただきたいと思います。

羽二生:力強いメッセージをありがとうございました!インタビューを通じ、文化から相手を理解しようとする姿勢や、コミュニケーションの大切さを学びました。今後もますますのキャリアフライ (飛躍)をお祈りしております!

二人で笑顔

トライエッティング取締役副社長兼COO菅沼美久氏(左)
キャリアフライ 羽二生知美(右)

Suganuma.pngのコピー

株式会社トライエッティング  取締役副社長兼COO 菅沼 美久氏
1989年生まれ、静岡県出身。南山大学大学院国際地域文化研究科修士課程修了(スペイン哲学)。日本企業の海外向け内部資料・仕様書を専門に取り扱う翻訳会社に入社、その後、名古屋大学大学院情報学研究科の職員として秘書業務に従事。2016年(株)トライエッティングを設立、取締役副社長兼COO(最高執行責任者)に就任。