日本だからこそ外国籍の我々にとって多様な道がある

aNmoda

10代から知る日本へ19歳で来日。田舎と都会生活を満喫する

Career Fly大野理恵(以下、大野):Yahoo!ニュースの記事を拝見し、フェイスブックからコンタクトさせていただきました。機会をいただき有難うございました。そして、突然にご連絡したにも関わらず本インタビューをご快諾いただき有難うございます!(笑)

aNmoda代表取締役アンナエルショワ氏(以下、アンナ氏):こちらこそ有難うございます!

大野:起業家として素晴らしいキャリアを積まれているアンナさんのお話をお伺いしたいと思います。19歳から日本で過ごされており、来日13年目となります。そもそも、アンナさんが日本を知り来日しようと思ったきっかけは何でしたか?

アンナ氏:両親が商売をしており、10代の頃からよく父の船に乗り日本へ訪れていました。それが日本を知るきっかけでした。大学での専攻は東洋語学部で、日本語と英語を学んでいました。日本⇄ロシアの両大学で学びを深め、両国間往復をよくしていました。日本の文化などをしっかり学ぶことを理由に、日本での生活を始めました。
出身は、ロシアのハバロフスク州のワニノと言う港町です。ハバロフスク市から成田空港まで2.5時間ほどで行けるため、日本は行きやすさがありました。日本海側である新潟県なども便が良く、加茂市に住んでいた時期もありました。

大野:そうか!新潟も空港があるから飛行機で行けますね(笑)!

アンナ氏:はい!新潟をなめないでください(笑)。

okスマイル

大野:失礼しました(笑)。郊外の新潟や都会の東京にもお住まいの経験があるので、アンナさんは都会と田舎生活の両方をご経験されており、バランスが良いですね。

アンナ氏:新潟に住んでいるときから、東京へ行きモデルのアルバイトをしていました。新潟と東京の往復をしながらでした。大学卒業後、3年ほどフルタイムのモデルとして活動をしました。

大野:その後、現在のaNmodaを起業されました。2014年に設立され、現在7期目でいらっしゃいます。
当時、就職活動など経験し、就職するという選択肢はあったのでしょうか。

アンナ氏:実は、一度もないです。就職活動も就職の経験もなく、選択肢としても自分の中にはありませんでした。

私が生まれ育ったワニノは港町で、周りをみると自分自身でビジネスを行い生計を立てている人が多かったです。そのため、自分自身でお金を生み出す感覚は非常に馴染みがありました。

一方、企業に入社し働くイメージは一切描いていませんでした。

大野:育った環境からやはり影響を受けるのですね。

アンナ氏:ただ、学生のときアルバイトの経験をしました。
ユニクロで販売のお仕事や、ホテルで通訳スタッフとしてロシアから観光ツアーで来る観光客に対してガイドをしました。これらのアルバイト経験から、日本企業での仕事の進め方などを学ぶことができました。仕事自体も大変楽しかったですが、日本式の仕事の進め方、ビジネスマナーなどを含め吸収できたことは非常に価値がありました。

社内での朝礼の習慣があることも知りましたし、お客様接客のイロハ、例えば「いっらっしゃいませ」でお出迎えをするなど基本的なことを学ぶことができました。

大野:それを知っておくことは、現在の仕事にも活きてきますね。

日本国籍同様会社設立は簡単にできる。ビザ取得は別問題!

ok手を組む

大野:学生生活が終わり、モデル→起業となるわけですね。会社をスムーズに立ち上げることができましたか?

アンナ氏:はい。設立手続きなどは専門家にお願いしました。自身で対応する手間を考えると、士業さんへアウトソースした方がトータルコストは同じだと考えました。書類手続き関係で苦労したことは一切なかったです。
会社経営に関して、大学で経営情報学部の中で経営/マーケティングなどの分野を学んでいました。その知識も活かせると思い、特に不安はなかったです。

士業さんにお願いして会社設立が完了したのは、1ヶ月後でした。
この設立プロセスから多くのことを学ぶことができました。

大野:ここで敢えてお伺いしたいのですが、外国籍であるアンナさんにとって会社を立ち上げることは何かハードルになることはなかったのでしょうか。

アンナ氏:一切ないです。日本は、国籍関係なく誰もが平等に株式会社を設立することができます。結構、周りからも同様の質問をされます。日本国籍同様、基本条件をクリアしていれば外国籍の方でも会社設立は可能です。

唯一、懸念となることはビザの問題だと思います。
会社設立し、事業活動を日本で行うには、「経営管理」ビザを保有する必要があります。そのビザを取得するには、いくつか条件が設けられています。例えば、資本金500万円以上もしくは正社員一名以上雇用する、事業計画の書類提出などの内容です。

設立当初、私のビザタイプは「興業ビザ」でした。このビザのまま、会社経営をすることは禁じられています。そのため、設立後経営管理ビザへ切り替える必要がありました。

大野:なるほど。ビザ切替の際に大変だったことはありましたか?

アンナ氏:すごく大変だったわけではないですが、資本金500万円を作ることですかね。
当時自身の貯金で全てを賄えなかった状況でした。その足りない分を、家族や友人に相談し借りることで500万円を捻出しました。当時、興業ビザのため銀行からお金を借りるなどできなかったのです。その際に助けてくれた家族や友人には本当に感謝しています。

大野:オフィスを借りることはスムーズにいきましたか?
今でも外国籍の方々がお部屋を借りることはハードルが高い印象です。

アンナ氏:そうですね。苦労している方もいらっしゃると思います。
私の場合、会社設立申請当初も特に問題なくオフィスを借りることができました。設立までの間にしっかり税金を収めており、その実績があります。それを証として、スムーズに部屋を借りることができました。

日本の方でもお部屋を借りるときに保証人をつけなくては、などの条件提示があると思います。収入基盤が証明できれば部屋を借りることができると思います。最近特に外国籍可能の物件も増えてきています。

大野:確かにそうですね。
会社設立のための情報収集はどのようにされたのでしょうか。

アンナ氏:ネット検索、口コミ、またモデル時代に積み上げた人脈から情報収集、これらの手段からですね。当時日本のモデルエージェントに登録していたことから、日本国籍の方々とのネットワークが広がりました。このつながりが本当に財産となりました。

大野:どのような方法で構築したのですか?

アンナ氏:たくさんの飲み会に参加しました(笑)。そこで、経営者の方々と出会う機会を得て、会社設立手順、事業立ち上げの方法などの質問をぶつけました。

画像4

大野:とっても手っ取り早い方法です(笑)!

アンナ氏:飲み会でこの類いの質問をする女性もなかなかいないと思うので(笑)。珍しいですよね。でも、私が真剣に質問をすると皆さん親切に真剣に答えてくれました。ビジネスモデルや収益方法などたくさんの情報を伺うことができました。とても、勉強になりました。

大野:経営者は経営を志す方へアドバイスしたくなりますし、真剣なアンナさんを目の前にすると応援したくなるのだと思います。

アクションを重ねて起業。デニムブランド立ち上げへ

アンナ氏:反対に、ネガティブな声もありました。
「外国の方だし、女性なのだから」という理由で辞めた方がいいよ、との言葉をいただくこともありました。少しざっくばらんにお伝えすると、”裏に誰がいるの?”と質問をされたことがありました。最初は全く意味がわからなかったですが、パトロンがいるのかということだったのだ、と気付き少し憤慨した覚えがあります。全て自分でやっているのに。

これは、外国籍起業家だからということではなく、「女性だから」という括りで言われているのだと思いました。

大野:女性の起業家も増えている中、いまだステレオタイプが存在しますね。同じ女性として当時のアンナさんのお気持ちとても理解できます。
起業の世界で日本はジェンダーギャップが未だ存在します。

アンナ氏:外国籍だからという色眼鏡より、女性だからという色眼鏡で見られることを起業して経験しました。どうせ女だから続かない、辞めてしまう、などです。

大野:継続性において、ジェンダーは全く関係ないですよね。

アンナ氏:そうですね。そんな出来事もありましたが、多くの友人知人がポジティブに応援してくれたことが本当に背中を押してくれました。

大野:最初の事業はアパレルと伺いました。どのようなブランドですか?

アンナ氏:デニムブランドです。企画をまとめあげ、自身でデザインし、岡山のデニム生地を選定し作りました。渋谷ヒカリエや横浜そごうでPOP UP SHOPを出すなど、結構良いところまで持っていきました。2年ほど熱意を持ち取り組んでいたものの、ふと事業収益をみたとき、このまま継続するのか、と自身と対話をしました。継続するには投資が必要、それをしてでも継続する事業なのか。そこで行き着いた判断は、事業転換でした。

大野:意思決定速やかでしたね。でも、企画して作って売ってという一連の流れをご自身で全てされていた!そのバイタリティに感服です。
その後、現事業に着手されました。

アンナ氏:そうです。アパレル事業を通じて、ここでも人脈形成ができました。カメラさん、メイクさんなど様々な方々と交流することができました。アパレル事業をしている中で、「モデルさんを探しているのだけど誰か知らない?」と訊かれることがありました。それに応えるかたちで事業化したのが現在のモデル事業です。

「アパレルやめて、モデルエージェンシーを明日からやろう!」
みたいな清々しい気持ちで決めました(笑)。

好きなことであればモチベーションも自ずとあがり継続できる

ok後ろ姿

アンナ氏:正直、アパレル事業に対する情熱がなくなってきており、あまりヘルシー(良い状態ではない)でないと思っていました。そんな状況ではいずれにしても継続できない。ぎりぎりまで悩み考えました。でも、自分自身をより良い状態にするためにも、切替えて新しいモデル事業をモチベーション高く着手する方が良いという判断に至りました。

大野:その後、どのようにモデル事業を軌道に乗せたのでしょうか。

アンナ氏:事業プランをまとめ、銀行へプレゼンし融資を申請しました。
当初の申請額100%受け取ることができました。新事業プロモーションのため、HP制作をしたり営業活動に集中しました。

当初は、日本居住のモデルエージェントとして40名ほどの外国籍モデルを集め登録してもらいました。そこから、20名に絞り各モデルのプロフィールを作り、様々なところに営業をかけました。お仕事をいただけるようになってくるとキャスティングに集中しました。

外国籍モデルエージェントのサービスタイプは二つに分かれます。
まず一つは、日本居住の外国籍モデルに特化したタイプ。アマチュアからプロまで存在します。完全な外国籍モデルからミックス(様々な国籍の持ち主)モデルまで様々なモデルが登録しています。

二つ目のタイプは、招聘モデル特化です。海外からプロのモデルを呼び寄せキャスティングしていきます。住まい、移動手段など様々なケアをエージェントサイドが行うことになります。
現在弊社も招聘モデルも取り扱っています。この場合、モデルと直接契約するのではなく、間に
マザーエージェンシーと呼ばれる現地事務所が入ります。契約によりますが、モデルの売り上げから10%ほどをマザーエージェンシーへ支払う仕組みです。業界内で長年適用されている決まり事です。

大野:居住モデルも招聘モデルの方々も抱えていらっしゃるのですね。コロナで影響ありましたね。(苦笑)

アンナ氏:本当に最悪です。(苦笑) コロナの影響で招聘型が成り立たなくなりました。
一方、良いこともありました。招聘モデルで来日していたプロの方達が国へ帰れなくなってしまいました。そのため、より質の高いプロの招聘モデルを専属契約に切り替えてもらい、長期的な仕事を請け負うことができています。さらには、招聘モデルは毎度自国と日本を往復します。その都度、弊社が迎えにいくなどの管理コストがかかってきますが、そこもなくすことができたので結果的にコロナの影響をプラスに変えることができました。

また、時間もできたことでコンテンツ制作に注力できました。
YouTubeでのコンテンツ発信を始めました。外国籍モデルが必ず出演するものです。イスラエルのモデルがラーメンを食べている映像が評判でして。現在、弊社のチャネル登録数は8000名でコラボ依頼も来ており順調に実績を積んでいます。

大野:素晴らしいです。ピンチはチャンスですね。

アンナ氏:YouTubeに出演しているイスラエル国籍モデルの子のおかげです。彼女は、現在就労ビザに切り替えることもでき前向きに取り組んでくれています。やはり、素直な方と一緒に仕事をすると成果も出できます。

これまでの業界慣習を壊し自社の差別化を図る

大野:それ以外にチャレンジしようと考えていることはあるのですか?

アンナ氏:モデルの活躍の場を増やすことです。上述したロシア国籍の招聘モデルが、マザーエージェンシーなしで、aNmodaと直接契約できた一人です。今年様々なところに出演したため顔が売れてしまいました。良いことではあるのですが、弊業界ではそのような状態となると翌年以降キャスティングされにくくなります。

そのため、彼女には韓国へ渡りモデル活動をしてもらう予定です。

このやり方は、弊社の強みでもあります。
マザーエージェントを挟まず、自分たちでマザーエージェンシーの代わりとなります。東京のマーケット向けの事務所ですが、東京でしっかり実績を作ったモデルをまた、全世界にプロモーションしていこうとしています。
現在、東京では外国人モデルの「マザーエージェンシー」が存在しません。

大野:まさにボーダレスでビジネス展開をされるのですね。

アンナ氏:日本のマーケットで活躍できたモデルは、アジアマーケットから仕事の依頼が来たりします。ロシア国籍の彼女も雑誌の表紙を飾り、CMなどにも出演した実績を買われ実際韓国からオファーをいただきました。

所属モデルのエージェントに対する満足度を考えても、より魅力的な仕事をエージェントがいかに獲得できているか、また報酬に対しても満足いく内容かなどを常に満たせるよう対応しています。

日本だからこそ外国籍の我々にとって「様々な道」がある!

画像7

大野:今後の展望を教えていただけますか?

アンナ氏:チームとして、みんなで好きなことをやり続ける、しかもノンストレスで(笑)というのが理想です。事業として、モデル事業をコアビジネスとしてチャレンジしましたが、これからはコンテンツ作りにも注力しようと考えています。
特に、ファッション事業に再チャレンジしたいとも思っています。常にクリエイティブなことに興味があること、またこれまでの経験値も活かせます。そこにテクノロジーも駆使ししながら新たな事業開発に取り組んでいきたいです。

「やりたい」という思いを大切にしたいです。
やりたいかやりたくないか、この基準に照らし合わせ仕事を続けられる状態にしたいと思っています。

大野:有難うございます。最後に、日本での生活を目指す外国籍の方々へアドバイスをいただけないでしょうか。

アンナ氏:「日本にいるからこそ外国籍である我々ができること」があります。
仮に、現時点で外国籍だからあれができない、これができない。日本の文化はコンサバなので溶け込むのが難しい、そんな風に思っているのであればそのネガティブは消し去ってほしいです。
現在、グローバル化を目指し活動している企業も増えています。そこで、グローバル感覚を持つ外国籍の方の知見やマルチ言語力などは求められています。ここ数年の間に「グローバル」という言葉自体も浸透してきました。また、外国籍の方々に対するビザの緩和もされてきています。

もちろん、様々な困難に直面するでしょう。私自身、困難がなかったとは言いません。

日本はコンサバな文化とよく外国籍の方々はおっしゃいます。私から言えば、決してコンサバではないです。様々な変化もかなり早いスピードでなされてきております。
「私は外国人だから○○できない」という考えがあるならば、ぜひ「外国籍の私だからチャンスがある!」そう考えるようにしてみてください!

大野:素晴らしい。どうせ同じ時間を過ごすならば、ポジティブ思考で考え、アンナさんのようにアクションを重ね良い経験を積み上げていきたいです。本日は素敵なお話をいただき有難うございました。

OK2ショット

CareerFly代表取締役大野理恵 aNmoda代表取締役アンナエルショワ氏


株式会社aNmoda 代表取締役 アンナ エルショワ氏にインタビュー
ロシアハバロフスク州出身。10代のころ家族ビジネスをきっかけに日本へ訪れる。在学中、留学プログラムを利用し新潟経営大学へ。卒業後、モデル活動を経て株式会社aNmoda(aNmoda Co.,Ltd)を設立。オリジナルデニムブランドを立ち上げ、数年後招聘外国人モデル・ハーフモデルなどをコーディネートするモデルエージェンシー事業を行う。