Career Fly ” 特別インタビュー 第一弾 “

前ニッセイ基礎研究所主席研究員アジア部長  平賀富一氏へインタビュー。
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アジアの経済や企業の動向を研究している平賀氏へ日本国内の人材市場における外国籍人材介入に関して話を聞いてまいりました。 人材不足の解消だけが外国籍人材を採用する理由ではないこと、企業が国内人材以外の人材になぜ力を入れる必要があるかを伺ってまいりました。

Career Fly インタビュアー(以下、C)- 日本企業の人材に関する課題を教えてください。

平賀富一氏(以下、平賀氏)- グローバルな事業活動のために必要な人材の不足が深刻だということです。国内の市場が縮小したり鈍化傾向にあるため、多くの企業が海外進出を事業戦略に掲げ推進しています。その際に必要となる人材の不足が大きな課題となっています。 つまり、即戦力となるグローバル人材やその候補人材の育成が進んでいないことが問題です。 それには大きく2つの要因が考えられます。「駐在員に関する問題」と「若者の海外志向が低いこと」です。 駐在員に関しては、「駐在員の平均年齢が40歳半ばと高齢化していること」「単身赴任が多い」という事情があります。まず、駐在員の平均年齢については、後で述べるように若手社員の中に海外勤務を敬遠する人が多いため、派遣者の多くが、これまでの経験やノウハウを活かして現地でビジネスを推進できる人材ということから中高齢層が中心になっています。さらに、日本企業の多くで、幹部・マネージャーの男性割合が高いことから、駐在員も男性が多い状況になっていると言えます。 単身赴任について。日本人は海外赴任が決まると、多くの人が「単身赴任」を選びます。そのため、家族単位での赴任が多い韓国などに比べて現地でのプレゼンスが低いということもあると思っています。

C – 単身赴任を選ぶと海外でのプレゼンスに影響するのですか?

平賀氏 – 単身者の多い日本人駐在員は、地元のコミュニティに入り込めない(込まない)ケースが多く、日本人コミュニティの中で過ごす傾向にあります。例えば、仕事終わりに日本食レストランに行き、日系の店舗で買い物し、理容室・美容院に行き、旅行会社で予約するといった調子で、日本人同士の交流が多くなります。その点で、対応が異なるのは韓国人です。韓国では、有利な就職に必要との理由から、英語学習への意識を強く持っています。そのため、早い段階で母子が海外へ行き、韓国に残る父親が送金して、子供に英語を学ばせるというケースが目立ちます。そのような文化的背景から考えると、夫婦どちらかに海外赴任のチャンスがあれば、会社が子供の英語教育費用のサポートをしてくれる好機ととらえ、多くの人が家族同伴での赴任を選択します。家族で赴任すれば、地域や学校でのローカルな交流機会も多くなりますから、韓国人は目立つ傾向にあり、現地での認知度やプレゼンスが大きくなります。

C – なるほど。次に、若者の海外志向についてはどのような事実があるのでしょうか?

平賀氏 – 日本の学生は海外に興味がないとよく言われます。ICTの普及が進む中、海外の事情や出来事はインターネット上で簡単に情報が入手できる、日本は安全・安心で便利だから海外にでる必要性を感じない、という若者もいます。 その中で、もちろん、海外志向の学生は少なからず存在します。若いうちに海外経験、あるいは海外の情報に多く触れている若者が、海外志向の傾向にあるようです。短期・長期の海外留学、日本国内で他国籍の友人を持つ、海外で活躍する先輩の話に触れるなど、海外でのポジティブなエピソードを知ることが海外志向を育むことへつながると感じています。 以前、学生から、”高校時代など、もう少し早く海外の情報に触れておきたかった”というフィードバックがありました。企業のグローバル化をテーマとした私の授業で伝えたことが理解されたと嬉しく感じました。 チャンスを与えれば気づける、行動できる、そして何かをなし得ることができるのが日本人です。早い時点での動機づけが、若者の海外志向を芽生えさせ、積極的なアクションにつながると思います。

C – 共感します。若者へのメッセージとしてメディアによる「Japan is No.1」の行き過ぎた発信が勘違いを生んでいると考えます。すでに、アジア各国が日本よりも進んでいる面があります。しかも、圧倒的なスピードで。日本はNo. 1だと過度に発信され、日本人が勘違いしていることも伝えていくことが若者の海外志向を生むことのスタートラインかもしれません。 国内でグローバル人材育成がなかなか進んでいない中、外国籍人材を採用することはやはり避けて通れないです。そもそも、平賀さんの定義する”企業のグローバル化”とは?

平賀氏 – 「進出先の国・地域マーケティングし販売する」ことが、近年の企業のグローバル化のトレンドだと思っています。 これまでの日系企業によるグローバル化とは、海外に生産拠点を持つこと、それもコスト削減が主目的というケースが目立ちました。例えば、低賃金の新興国に工場を作り、欧米日など大市場への輸出のための生産拠点とすることなどです。

C – 日本以外の国で売ること、それが現在のグローバル化のトレンドであり、日本企業にまさに求められていることですね。

平賀氏 – その通りです。事情の異なる他国の市場で自社製品の販売実績を挙げることは、日本人だけの知恵や経験ではなし得ません。例えば、エースコックのベトナムでの事例を取り上げてみましょう。 エースコック製品「HAOHAO」は、ベトナム現地で40%のシェアを誇る即席麺となっています。同社は、当初、日本の製品コンセプトをそのまま持ち込み、高級路線で販売をスタートしましたが、販売は不振で、一時は撤退を考えたとも言われています。そこで、戦略を変え、現地スタッフを採用・活用し、味、製品のネーミング、価格帯やパッケージなどを現地仕様に変更しました。ターゲットを中間層として販売、ボリュームゾーンの多数の顧客を獲得することができ、HAOHAOは現地で大ヒットしました。麺・スープなどの生産技術面はジャパン品質をキープしながら、それ以外は全て現地のニーズや嗜好に合わせてカスタマイズした成功例です。
*エースコック社製 ベトナムで年間50億食消費されるHAOHAO

C – いわゆるグローカライズに成功した典型的な例ですね。 その地で売るには、国の文化、人、言語、トレンドなどを熟知したローカルの感覚やセンスが必要となる典型的な事例ですね。日本人だけではなし得ないです。

平賀氏 –もう一つ例をあげましょう。インド市場における、サムスンの鍵付き冷蔵庫です。インドで販売するには、鍵をつけるニーズがありました。当時、冷蔵庫を家庭で保有するのは富裕層。そこで働くメイドが冷蔵庫の中身を勝手に、食べたり、持ち帰ってしまうということを防ぐために鍵をつけたわけです。この製品の優れた点は、現地でのメイド文化の理解と、実際にそのような被害があるという事実を知るローカル人材の知恵を活かしている点です。
*サムスン社製 インドで販売する鍵付き冷蔵庫

C – また日本企業は、元々自社内にある優れた技術やサービスを上手く展開できていないケースもあるのですよね?

平賀氏 – はい。これまでの事例は、海外市場に展開中の企業による現地での製品のカスタマイズというストーリーでした。一方、海外で十分勝負できる技術やサービスを保有しているにも関わらず、そのことに自らが気づいていないというケースもあります。例えば、パイロット社の事例です。後にフリクションペンに結び付く消せるボールペンという技術が長年見過ごされていました。ある時、偶然にも、その技術の可能性に気づいたのが同社のフランス子会社のフランス人社長だったとのことです。フランスの学生が使用する筆記具はペンのみで、鉛筆と消しゴムを使用する文化はないため、筆記した内容を修正したいときは、修正液を使うしかないという事情がありました。そんな文化の中で、学生からのニーズにフィットするフリクションペンは爆発的に売れました。日本企業は優れた技術を保有しているものの、マーケティングや販売など効果的なアクションにつなげることが不得手な傾向があります。そこに、客観的で異なる視点を持つ外国籍の方々がチームに参画することで、パイロット社のような事例がでてくるわけです。 優れた技術やサービスのビジネス機会を広げる上で外国籍人材の価値は大きいと思います。また、そのアイディアや提案を柔軟に受け入れる日本人がより増えることで、上述したような成功事例が増加すると考えます。


後編へ続く →  「インタビュー:企業が外国籍人材採用を避けて通れない真実(後編)」

 

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